31(2005.12 掲載)
D
Il a mis le caf
タイトルの D
この詩でも日仏英のバトル・ロイアルが見られる。tasse はコーヒーカップと訳すのが一番楽だ。でも英語を使うのは癪にさわる。それで北川は茶碗と訳したのだ。おれは、茶碗とは茶を飲むための碗ではないかと考え、悩んだすえ、より中立的な湯飲みに到達したのだった。ただし優劣がつくほどのことではない。つぎに北川はコーヒーとかミルクという言葉を使いながら呻吟し、ミルクコーヒーをつかわざるを得ない仕儀に至ってはほぞをかんだであろう。カフェオレという単語がつかえる時代に訳したおれのほうが有利だった。それなのにおれはシガレットをわざわざタバコとしてしまった。チョンボであった。
やさしいフランス語だから解釈に差が出ることはない。あとは感性の問題。女性視点の詩であるのは疑いのないところだが、さて女っぽさをどう表現するか。北川は「あたし」をつかった。おれは極端に単純な単語をつみかさねていく主人公の意識のありかたを見て、このひとは女々しさを拒否しているのだと読んだ。それで女らしさは「雨がふっていたからよ」の「よ」ひと文字にとどめた。
終始冷静な言葉で情景を描写してきた女は、最後の3行で感情を爆発させる。Et moi j'ai pris/Ma t
翻訳勝負はこれにて打ち切り。
@ LA BELLE SAISON 勝者=北川
7番やって2勝4敗1分け。こちらがジャッジを兼ねるという試合だから、おのれに有利な判定はするまいと心がけたせいもあるが、実力の差は明らか。なんとかドローに持ち込んだここらが引き時だろう。
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