●障害老人乱読日記 140
『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』
●俳号
夏井がPHPの編集者を相手に、対話形式で講義を進めていく。編集者は俳句初心者。
本屋で背表紙を眺めながら作句を始めて1年も経たないわたしにはうってつけだと思った。
俳句は何でもありの自由な文芸で、「♪」「★」などの記号やアルファベットを使ってもOK。夏井が車を運転中追突され横転、
救急車が来るまで俳句を作っていたというエピソードを披露、自作「指で〇(マル)作りて笑う星月夜」という句を作っていたと余裕を見せる。
横転してもへっちゃらだいという意味での〇か。
では、わたしは藤川景のうしろの2文字をとって「川景」としよう。川の風景。美しいではないか。 ●音数 チューリップは何音に当たるか。「チュ」のように拗音が入るばあいは、前の字と合わせて1音。「チュー」のようなオンビキは1音として数え、 「リップ」のような促音は1音と数える。合計5音。 ●「一物仕立て」と「取り合わせ」 @白藤や揺りやみしかばうすみどり (芝不器男) Aしら藤や奈良は久しき宮造り (黒柳召波)
最初の句はわかりやすい。2番目は分からない(しら藤が美しく咲いている。奈良では、久しぶりにお宮の建設が始まったという意味らしいが、
その土地の人でない限り説明を聞かなければ分からない)。
話は飛んで、篠原梵(ボン)という俳人に少し触れたい。知っているひとは少ないだろう。わたしの勤めた会社の社長で、
愛媛県出身・東大国文学科卒だから知っているひとは知っている。このひとは「取り合わせ」と切れ字を嫌った。
晩年に選集を出し、私たち社員にも1冊ずつくれた。わたしも大切に保管していたが、数奇な運命に翻弄されているうちになくしてしまった。
それでも「葉桜の中の無数の空さわぐ」はよく覚えているし、「吾子(アコ)昼寝小さき指(オヨビ)汗の髪掻く」などは暗誦できる(選集に見当たらないが)。 ●類想
誰もが思いつくような凡人的発想のことを「類想」、その類想から生まれた誰もが作りそうな俳句のことを「類句」、合わせて「類想類句」と呼ぶ。 ●尻から俳句――俳句は型
さあここから実践篇だ。上五・中七・下五でできている俳句を、下五からつくっていく。まず5音の普通名詞をなるべくたくさん見つける。
次に中七、上五と考える。たとえば「腕時計」を下五、中七に「時の止まった」、最後に季語の入った上五「蝉時雨」。 ●中七 《「中七」は、字余りや字足らずになると俳句らしいリズムが失われるので、七音ちょうどで作るのが定石といわれています。》 ●十二音日記 《こんな風に「五・七」あるいは「七・五」で日記を書くと、それがそのまま「俳句のネタ」になります。》 ただし、@季語らしきものを入れない、A「うれしい」「悲しい」などの感情を表す言葉を入れない。これは重要なことのように思われる。
強調・詠嘆をあらわす。映像を切り替えて、2カットの俳句にする効果もある。「古池や蛙飛び込む水の音」を「古池に蛙飛び込む水の音」にすると、
一句の意味が直線的になって、最後まで一息でスーッと読めて、印象が薄くなる。「や」にすると一度映像が切れる。
この少しのあいだに人間はいろいろな想像をする。夏井は「プレバト」でも盛んに「画像を切る」ことを指導する。
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