2020年10月号

《十七音のうた》

宇宙ゴミ透かして愛でる星月夜(ホシヅクヨ)    (川 景)

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(「ナショナルジオグラフィック」から転載)


主なものでも1万8000個

 地球と人工衛星の距離は、30cm地球儀に換算すると5mmだとたしか椎名誠氏が書いていた。 そんな近い距離のところに、気象衛星はいいとしても各国の軍事衛星がひしめき合っている。当然それらがぶつかり合って無数の破片になったものも。
 いつのことだったか、日本人宇宙飛行士古川聡氏が滞在する国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙ゴミが250メートルの距離まで接近し、 ISS滞在中の宇宙飛行士たちが宇宙船ソユーズに一時避難した。今回は事なきを得たが、 地球上空の軌道には主なものだけで約1万8000個の宇宙ゴミがあるという。画像はそのイメージ。 ジェット機ですら数百メートル以上接近したら衝突とみなされる。ゴミたちは真空の中を何万キロのスピードで走り回っている。
 寿命が尽きて放棄された人工衛星のほか、破損した人工衛星の欠片、分離したロケットのステージ、宇宙飛行士の固形排泄物、 その他のさまざまなものがある。

 人工衛星と同じように、低軌道デブリは時速2万7000キロ以上の高速で地球の周りを移動しているという。そのような超高速度のため、 微細なゴミであっても、稼働中の人工衛星や宇宙探査機、宇宙遊泳中の宇宙飛行士に衝突すれば衝撃は大きく、深刻な被害をもたらしかねない。 NASAをはじめ、宇宙に関する国家機関は軌道デブリを深刻な問題と捉えており、既存の宇宙ゴミを減らし、 将来のデブリを抑制するためのプランを考えている。日本だって考えていないわけではない。遅れているだけだ。
 のんきに「ほしづきよ」か「ほしづくよ」かを論じているばあいではない。平安時代の歌人が詠んだような素晴らしい歌を詠むためには、 宇宙ゴミを掃除しなければならない。
 海もまた、いまやプラスチックのスープ状態だという。わたしとしては地球を産業革命以前に戻してほしいと思う。 (「ナショナル・ジオグラフィック」を参考。)