2020年11月号

《十七音のうた》

道東の海霧を払ふ摩周岳    (川 景)

20201101.jpg"

 2013年7月、釧路川源流をカヌーで下った。原生林の中を滑るように行く。
 釧路はいつも寒い。釧路沖で、暖流の黒潮が寒流の親潮によって冷やされ海霧が発生、この霧が内陸の摩周湖に達すると、 眼前は一面の霧となり、なにも見えなくなる。
 「べつの名所へ行きましょうか」と運転手は言って走り続けたが、突然「摩周岳が見える、いまなら晴れてますよ」と言ってひきかえした。 別世界があった。
 海霧も摩周岳もこのとき知った言葉。