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書籍版紹介テープ版紹介【書評から】【読者から】インターネット文庫増補版(txt, pdf)
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書籍版紹介

uwano.jpg  著 者 藤川 景
 発行所 株式会社三五館
 (電話 03-3226-0035)
 初版発行 1993年6月26日
 装 幀=多田 進
 装 画=北山 竜
 定 価=1262円

テープ版紹介

uwano_t.jpg  写真=オフィス・コア

 発行所 有限会社オフィス・コア(電話 045-263-1585)
 定 価=1万円


【書評から】

椎名誠氏評
 『上の空』(藤川景/三五館)を全編息をつめる思いで読んだ。
 藤川さんはちょっとした転落事故がもとで首の骨をおる頸髄損傷というとても厳しい災難にあった。首から上だけの感覚だけが残った。ある縁があって知りあいになりこの藤川さんが入院した当初病院にお見舞いに行った。藤川さんは早稲田の文学部を卒業し十年以上編集の仕事をしていた。相当な読書家でユーモアに満ちたやさしい父親であった。もともと文章が書ける人だから、「本を書いたらどうですか」とその折にすすめたのだ。そして藤川さんは六年がかりでこの本を書いた。事故から今日までの話だ。すさまじく厳しい体験をつづってあるのだが、独特のユーモア感覚で、読む者にとってけっして息苦しくはない。ものすごく強い精神力の持ち主なのだろうな、と改めて思った。そして読み終わったあとに、不思議なことにこの藤川さんに静かにしみじみはげまされるような気持ちになる。はげまさなければいけないのは逆の立場ではないか、と思うのだが、それがちがうのだ。「せめて右腕一本の自由が欲しい。でも――青空の下を自由に歩ければ、もう何もいらない」と藤川さんはこの本の中で語っている。文句と不平のある人すべてにこの本を読ませたい、と思う。(「本の雑誌」1993.9)

黒田清氏評
 私たちは、毎日、ふつうに体を動かして生活している。著者もそうだった。歩くのが好き、読書好きの編集者だった。ある日、転落事故で、気がついたら首の骨を折っていた。
 そこからの闘病物語が、この本の芯である。肩から下がマヒしているというだけでなく、強烈なしびれと痛みの中で生きていく。しかも治癒はありえない。そんな過酷な条件の中で、自分ならどう生きられるか。
 そんな自問を繰り返しながら、夜中の四時間で一気に読み終えた。
 著者の持っているユーモア精神で、少しは楽になるが、やはりその重さが私たちのすぐ隣りにあるものだということで、本を放すことができないのだ。
 病状生活について書いた本は何冊も読んでいる。だから、ついこちらがマヒしてしまうのだが、そんなつもりで読んでいたら「毎日朝から晩まで息をしているだけで精一杯だった」というような一文がヒュッと出てきて事態の厳しさを改めて認識させられる。
 奥さんのことがよく登場するが、これも献身的な看病というような定型的なものではない。「妻は絶望の黒い沼に向かって茫然と歩きだした。私はそれを抱き留めることができない。気配を察知し、ベッドの中からあらん限りの声で呼びもどすというもどかしいいとなみを幾度くりかえしたことだろう」
 手も足も動かない痛む体で、六年かかってできあがったこの出版への過程自体も、一つの物語になっている。(「月刊宝石」1993.9)


【読者から】

 「上の空」の文中に出てくる、障害についての説明、医療器具等の名称、その他一つ一つの事物の説明や目的など実に良くしらべられて、記述されているのには敬服いたしました。(神奈川県・男性頸髄損傷者)

 私も去年の夏、交通事故により脊髄損傷で下半身マヒになったので大変興味深く読ませていただきました。藤川さんの御努力には敬意を表します。今後も障害者の体験談などの本を出版して下されば、ぜひ購入したいと思っています。排便の仕方など表面的な事でないほんとに知りたいことが書いてあってたいへん良かったです。(埼玉県・コンピューターソフトプログラマー)

 じつは私の主人も同じ頸髄損傷で、原因こそ違えまるで一卵性双生児の様にそっくりな症状に驚きました。特大のトレーナーを買った件、痛む肩の方から手を通して着せること、ズボンをはかせるのが大変なこと、お風呂の入れ方からバルーンの洗浄まで、そして本を読む時左の隅を折ることまで、何もかもまったく同じことにおどろきました。(東京都・主婦)

 私の主人は友達の家から夜9:00頃帰宅する途中(夫婦で)側溝に転落してしまい頸髄損傷になってしまいました。頸髄という病気、ケガ…何の知識もなく不安な毎日を過ごしていた時友達から「上の空」の本をいただきました。夢中で読みました。主人も体転して私が本を持ち読みました。(長野県・主婦)

 私の愚妻(45才)も2年前(91年)のクリスマスに川に転落して頸髄損傷の体となり今年(93年)5月に退院して家に居ります。頑張っている様ですが死にたい様にも観えます。クリスマス・プレゼントにと考え昼食時に読売新聞から見い出し、これが、この本が最高と決め、本屋に電話予約、スグ取りに行った。(兵庫県・55歳会社員)

 実兄が5月20日に18才の若者の一時停止無視による交通事故で頸髄損傷になってしまいました。現在、この本にも出てくる国リハに入院予約中です。この1か月余り、やり場のない気持ちでいました。温和な兄が激怒し、兄嫁が号泣する悪夢を見たその朝、新聞でこの本のことを知り本屋さんに走りました。こういう本が読みたかったのです。奇縁を感じます。正直いって気の重くなる場面もたくさんありました。でも頑張って出版までされた過程を考えると、本当によくやってくださったとお会いしてお礼を言いたいくらいです。この本がたくさんの人に読まれ、この疾患が多くの人に理解され、そして福祉や在宅看護がもっともっと充実することを祈らずにいられません。(新潟県・35歳主婦)

 私も貴著を通じて頸髄損傷の方の苦しみを一層理解することができ、勉強にもなりました。私達医者というものは苦しみは患者の数だけあることをとかく忘れがちです。(東京都・医師)
 
 「上の空」はとても読みやすくドンドン読みすすむことができた。実際にこれだけの本を発行するに当たってC5の人が書けるのだろうかという疑問、著者を取り巻く環境がよかったのだというラッキーな境遇に羨ましい限りだという感がつよく、皆、異口同音の意見であった。(広島県・40歳看護婦)

 健康であることが何物にも変え難く有難い事だと思います。私も半年前に抑うつ病になり6年半で会社を退め、先の事がとても不安でしたが強く全力で生きなければと思いました。藤川さん、本を書いて下さってありがとうございます。(愛知県・30歳女性)

 とてもすがすがしい読了感でした。著者の心意気が伝わってきて、読者を決して暗い気持ちに引きずり込むことのない本でした。あらためて「本と出会うよろこび」と「生きる幸せ」を痛感させられました。(宮城県・24歳会社員)

 私自身人生の転機を迎え、身も心もズタズタなりそうな弱気の時にこの本にめぐりあいました。藤川氏に目を覚ましていただきました。このように魂の強い方の存在を知り、いつかお目にかかってお礼を申し上げたいと心から思いました。素晴らしい本を私の一生の宝となり得る本をありがとうございました。(神奈川県・28歳講師)

 藤川氏の「強さ、優しさ」に涙が出た。その上質のユーモアに泣きながら笑った。今は読後の充実感でいっぱい。すばらしい本に会って幸せで感動!! 友人にも2冊配った。(大阪府・48歳会社員)

 まず文章がいい、洗練されていて簡潔。そしてユーモアがある。さらに病院、家での日常生活が抑制のきいた調子で見事に描かれ、他の闘病記と一線を画している。文才、観察力、人柄に惚れました。次作も期待しています。(兵庫県・男性)

 読後感がまことに爽やか。同業者として、著者、編集者に敬服。闘病記というより、面白く書かれたユニークな体験記、エッセイを楽しんだ気がする。著者にエールを。(千葉県・53歳編集者)

 人生観が変わるほど衝撃を受けた。平穏無事な毎日を感謝しなければ罰が当たると思った。(三重県・自営業)

 3日間で読み終える、あと一行で終わりというときに自分でもびっくり。急に涙が出てきて止まらず、これがすべてを物語っているような気がします。(茨城県・43歳女性)

 障害者の手記は数限りなくあるが、氏のように素直に表現されたものはほかにない様に思う。健常者では理解できない状況にありながら、尚ユーモアを忘れない語りかけには参りました。妻との壮絶な戦いももっとある筈であるが、さらりとかわしたところは少しかっこよすぎると思うが、これ以上書けないと私は思う。ともあれ、久々に感動を覚えましたが、ボランティアに対する考え方も変わりました。(熊本県・53歳公務員)

ボランティア活動を受けている人の意見に接することもできた。藤川景著『上の空』の末尾に、ボランティアには「心意気」という訳語を付け加えてみてはどうだろう、とある。頸髄損傷で肩から下がすべてまひ、という身で書いた本だ。むしろ藤川さんの心意気に読むものは元気づけられる(朝日新聞「天声人語」1993.10.10)


インターネット文庫増補版

  uwano.txt(MS-DOSテキストファイル)

  uwano.pdf(要Acrobat Reader 4.0、増補版準備中)

 

【MS-DOSテキストファイルの利用の仕方】

1. MS-DOSテキストファイルを、左クリック(Windows の場合)して開く。
2. テキストの画面にマウスポインター(矢印)を置いて右クリックする。
3. 「すべて選択」を選び、右クリックして「コピー」する。
4. ワープロソフトを立ち上げる(新文書を開く)。
5. 文書の冒頭にマウスポインター(矢印)を置いて右クリックし、「貼り付け」る。
以上で出来上がり。文書名をつけ保存してからお読みください。

 
【PDFファイルの読み方――初心者向け】

 PDFファイルはページ数が多いので、いったんご自分のパソコンに保存し、その保存ファイルを下記のように操作してお読みください(Windowsマシンを使用する場合を想定して説明します)

1. PDFファイルを右クリックして、「対象をファイルに保存」する。
2. 保存したファイルをクリックすると、Acrobat Reader が立ち上がり、PDF の1ページ目が開きます。全画面表示を選んで、画面いっぱいを使って読むようにしてください。
3. 文字の拡大・縮小は、上段のバーにある%表示でできます。数字を打ち込むことで1%単位で変えられます。
4. 次のページを開くには、下段のバーにある▼(右向き三角)をクリックしてください。左サイドの「サムネール」をつかう方法もあります(詳細はAcrobat Reader のヘルプ参照)。