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書籍版紹介テープ版紹介【書評から】【読者から】インターネット文庫増補版(txt, pdf)
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書籍版紹介

5byou.jpg  著 者 藤川 景
 発行所 株式会社三五館
 (電話 03-3226-0035)
 書籍初版発行 1997年2月7日
 装 幀=多田 進
 装 画=松本孝志
 定 価=1400円

テープ版紹介

5byou_t.jpg 写真=オフィス・コア

 発行所 有限会社オフィス・コア(電話 045-263-1585)
 定 価=1万円


【書評から】

「暮しと健康」誌評
 転落事故の結果、頸髄を損傷し全身麻痺となった藤川氏のニ作めの著書である。頸髄損傷を略して「けいそん」というが、障害のレベルは損傷の程度に比例する。氏の場合は、首から下は「痛みとしびれ感を残してまったくマヒした」状態だ。
 都内の閑静な住宅街の一角にある自宅にお邪魔する。ご本人は意外に顔色もよく元気そうに見える。
「話す方はなんともないものですから、なんだ元気じゃないかとよく言われるんですよ。でもこのとおり、やはり全身麻痺なんです」
 電動車椅子をリクライニングさせ、そこに横たわっている氏はこういう。なるほど「ちょっと目」には誤解されそうなあんばいである。頭脳は明晰、言葉はまったく不自由なく操れるからなおのことだ。だが重い障害の事実にいささかの変わりもない。
 愚問と知りつつ、健常者のサイドに立つ者としての素朴な疑問である「障害の受容」を問う。どなられることも予期しながら……。
 「障害を負ったその時から受容はしていましたね。でもだからといって前向きに、とか明るく……うんぬんというわけにはとてもいきません」
 当然ともいうべき返事が即座に返ってきた。このようなぶしつけな質問を何度も受けてきたにちがいない。われわれ「健常者」という名の人間の傲慢をここに見る。
 前作『上の空――』には、障害を負う過程やその後の混乱がつづられているはずだ。氏はこの一冊を、口に筆をくわえて六年がかりで上梓したという。今回の本では「全身麻痺の私が在宅生活をより快適なものにするためおこなったさまざまな工夫を中心に述べることにした」とある。しかし実際に本をひもといてみると、氏一流のセンスを生かしたわが国の福祉の現状に対する疑問や批判、そして問題提起もかなり盛り込まれている。
 それらをここでくどくど紹介するつもりはない。ぜひとも触れておきたいのは、“けいそん”が決して他人事などではなく、いつだれに降りかかっても不思議ではないという点である。交通事故であれ、単なる偶然の結果であれ、だれしもなりうる可能性を持っている。
 その次の段階で待ち受けているのは「布団一枚はぐ力もないわが身」であり、まもなく「あのころがわが人生の黄金期だったということに気づく」自分である。その黄金の日々はもう二度と帰らない。冷厳な事実をこれでもか、これでもか、と突きつけられるのだ。しかも逃げ出す術はない。
 もっとも有能な介護者であり、またいちばん近しい存在であった妻もすでにない。週三〇人もの介護者がまるで公園のようにこの家に出入りしないと氏は生きていけない。家族介護の難しさと限界を身をもって味わった氏はこういう。
「よく介護者というヒトの問題ばかりがとりあげられますが、モノも必要なんですよ。必要なモノが整備されれば、ヒトの問題はかなり解決されますが、これがものすごく巨大で高価につくのでヒトに頼らざるを得ないわけです」
 氏の場合、今現在のヒトの問題はうまくいっているからいいものの、これが続く保証はない。在宅けいそん者の多くがこの問題で苦労しているという。それもこれもが、お決まりのお寒いわが国福祉事情に起因するわけである。
「スーパーマン」を演じたクリストファー・リーブが落馬事故で全身麻痺者となったことを知っている人も多いだろう。彼は車椅子を駆ってワシントンに行き、大統領と直接会って脊髄損傷研究予算の一千万ドル追加拠出をとりつけた。この日本では考えられないことである。
 六年かかった前作とちがい、今回は三年で上梓した。光キーボードによりキーに光を当てて使うパソコンによるところも大きい。だから「パソコンは福祉機器」と思っている。ただ二時間が限度というネックはあるけれど。
 好きだった酒のほうは「350mlほどのカンビールくらいは晩酌してますよ」と笑う。重い気持ちで読んだ本ではあったが、この笑いで少しは気が軽くなった感がした。
 氏の体調も考えず、つい長居して、脈絡のない話で時間を費やしてしまったようだ。元ベテラン編集者だった氏の目に、この記事はどう映るのか、そこが気掛かりである。(1997・5)

松井和子氏評
 『上の空』に続く藤川さんの2作目『五秒間ほどの青空』が出版されました。
 以前、お宅を訪問したとき、こんどは「道具」について書くと伺い、道具って何だろうと思っていましたら、自助具や福祉機器のことでした。全身麻痺となった人が他者の手をわずらわさす気兼ねを最小限に何かをしようとすれば「道具」の工夫は必須だからと藤川さんは述べています。
 でもこの本は「道具」が主題ではなく、四肢麻痺で介護される立場から介護する人、とくに家族、中でも配偶者との関係が主のように私は感じました。
 『上の空』では頸髄損傷とは当事者にとってどのような障害か、貴重な情報をたくさん提供してくれました。
 2作目『五秒間ほどの青空』は、頸髄損傷が家族の生活にどんな影響を及ぼすのか、家族と協調しながら在宅で生活するにはどのような工夫が必要なのかなど学ばせてくれます。(「はがき通信」1997・3)

「小児歯科臨床」誌評
 頸髄損傷と闘いながら執筆活動を続けている男性の2作めの手記。
 著者は1987年夏、38歳のときに転落事故に遭い、首から下の機能を失った。その後いくつかの病院を転々とし、約1年後、病気がちな妻と小学生2人が待つ家庭に戻り在宅生活にふみきった。その退院までの日々は前作に詳しく記されているが、今回は、つらい在宅生活をより快適なものにするため自身がおこなった道具の工夫などを、同じ障害を持つ人たちに伝えることが執筆の動機であったという。
 著者の工夫はまず、「地獄のよう」な痛みとの闘いに始まる。「もし悪魔というものがいて、そいつが寝返りの自由を保障してくれるなら、私はいつでも取引に応じる用意がある」。ベッドでは、エアマットの失禁予防シーツをビニール様のふろしきに換え、やわらかくした。つぎは車椅子への乗車。特注のカットアウト・テーブルに伏せて、背中の痛みを軽くする「前のめり」体位がベストであると発見する。
 さらに本や新聞を読むこと、原稿を書くこと、書いたものを添削することと、事故以前は出版社で10年以上編集に携わり、活字中毒を自認する著者ならではの工夫が続けられる。それは、失った機能を再び獲得していく尊い自己実現の道のりでもある。
 他の頸損者がすぐに取り入れられるよう少しでも具体的な情報をという配慮だろう、イラストがわかりやすいことに加えて、選挙時の郵便投票の手順など丁寧な解説がなされ、「介護される側」に立つ表現者のメッセージが率直に伝わってくる。(1997・8)


【読者から】

 藤川さんの本は実用的で、私には頸損者のサバイバルブックのように思えました。その工夫するパワーを私もいつかもちたいと思います。(東京都・頸髄損傷者)

 私も藤川さんと同じ状態で頑張っているので非常に参考になり、これからの励みになりました。(長野県・77歳男性)

 私の兄が39歳で交通事故にあい頸損になったのは、93年5月20日のことでした。国リハへの転院が決まり、空きベッド待ちで「上の空」と出会いました。とてもショッキングな出来事でしたが奇遇なことでした。「上の空」ではたくさん助けていただきました。この本もとても重い一冊ですが、人の出会いの素晴らしさ、とてもよかったです。(新潟県・自営業)

 途中、何度も涙が溢れてきて、先へ進めず困ってしまいました。「生きていく」という事を深く考えさせられた作品です。個人的にこの時期、この本に出逢えて本当によかった。勇気と力が沸いてきて『よっしゃ頑張ってみよう!!』と思えるようになりました。(兵庫県・28歳会社員)

 全編を通してユーモアがあり、救われます。郵便投票をかちとった。選管とのやりとりは胸がすく思いでした。藤川景さんは、看護人に対してどんどん甘えたほうがよいのではないでしょうか。(東京都・58歳主婦)

 ユーモアのセンスある文章で、大変な事がさらりと書かれているような雰囲気の中で(本当は凄く大変なことなのに)一気に読ませていただきました。“知らない”ということが罪悪のような気がします。先づ“知るということ”が第一歩、そしてつぎが関心を持って私に何が出来るかと考えてしまいました。(東京都・61歳女性)

 非常に興味深く読みました。「上の空」の方もぜひ読みたいと思う。(大阪府・30歳女性)


インターネット文庫増補版

  5byou.txt(MS-DOSテキストファイル)

  5byou.pdf(要Acrobat Reader 4.0、増補版準備中)

『五秒間ほどの青空』のテキスト版をダウンロードされ、イラストもご入手されたい方は、以下の画像ファイルをダウンロードして下さい。

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【MS-DOSテキストファイルの利用の仕方】

1. MS-DOSテキストファイルを、左クリック(Windows の場合)して開く。
2. テキストの画面にマウスポインター(矢印)を置いて右クリックする。
3. 「すべて選択」を選び、右クリックして「コピー」する。
4. ワープロソフトを立ち上げる(新文書を開く)。
5. 文書の冒頭にマウスポインター(矢印)を置いて右クリックし、「貼り付け」る。
以上で出来上がり。文書名をつけ保存してからお読みください。

 
【PDFファイルの読み方――初心者向け】 

 PDFファイルはページ数が多いので、いったんご自分のパソコンに保存し、その保存ファイルを下記のように操作してお読みください(Windowsマシンを使用する場合を想定して説明します)

1. PDFファイルを右クリックして、「対象をファイルに保存」する。
2. 保存したファイルをクリックすると、Acrobat Reader が立ち上がり、PDF の1ページ目が開きます。全画面表示を選んで、画面いっぱいを使って読むようにしてください。
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4. 次のページを開くには、下段のバーにある▼(右向き三角)をクリックしてください。左サイドの「サムネール」をつかう方法もあります(詳細はAcrobat Reader のヘルプ参照)。